1.はじめに

 今年の頭に転職活動を行い、6月からデータサイエンティストとして働くことになりました。もともとはメーカーで設計開発の仕事をしており、業務プログラミングの経験もない状態でしたが、幸いにもKaggleやAtCoderの実績を評価してくれた複数の企業から内定を頂くことができました。どちらかというとKaggleでの活動の方が評価されたかとは思いますが、AtCoderを通じて知り、応募に至った企業もあったため、今回は両方を併記させていただきました。
 転職活動時は未経験で雇ってくれるかが不安で、その手の記事や情報を漁りまくった覚えがあるため、役に立つかはさておき転職エントリという形で共有したいと思います。なお、採用側の守秘義務等も踏まえ、受けた企業については伏せさせていただきたいと思います。また、特定の企業に関するエピソード等も割愛させていただき、その他転職活動中の出来事についてもある程度一般化した形で記載させていただきます。

経歴・実績等

 転職活動時の経歴や実績を簡単に紹介します。

  • 理系修士卒(非情報系)
  • 大手メーカーの設計開発職(2020年入社)
  • Kaggle Master
  • AtCoder水色(Highest 1565)
  • 資格:応用情報技術者

転職活動結果

 転職活動の結果自体は下記のとおりでした。ポジションとしてはいずれも「データサイエンティスト」あるいは「AIエンジニア」に相当するものです。また、コロナの影響もあり、選考は全てリモートで行われました。

  • 応募:約20社
  • 書類通過:12社
  • 内定:4社

2.転職活動に至るまで

 まず、転職活動に至るまでの話を少し、時系列順で述べさせていただきます。

2020年4月~8月(入社+AtCoderにハマる)

 新卒で大手メーカーに就職しました。もともと研究でプログラミングには触れており、会社でもソフト系の配属だったら良いなと思っていましたが、結果的に配属はハード系の部署でした。一方、プライベートの方ではAtCoderや当ブログの開発に取り組んでいました。AtCoderは、修論時期にコードを書く機会がなくなってしまいなんとなく寂しかったことと、アルゴリズムの勉強がしたかったことが理由で始めました。5月下旬からはコンテストにも参加し始め、水色まではすんなりと達成することができました。この他にも「ブログを作ってフロントエンドからバックエンドまで軽く学んでみたい」という理由でRuby on Railsについて少しだけ学び、当サイトを作ったりしていました。

2020年8月~2021年1月(Kaggleにハマる)

 社会人になってから、知的好奇心のままに各方面に手を伸ばし、趣味としては十分楽しめていましたが、もう少し仕事との関連性から何か学べることはないかと考えました。もっとも自分はソフト系の仕事はしていないので、直接的な関連性がある技術というのはなかったわけですが、世の中の動きや会社の抱える課題等を踏まえて、AI・データサイエンス系をもう少しちゃんと学んでみることにしました。
 機械学習についてはド素人で、修論執筆後に興味本位で少しだけ勉強し、ネットの情報を頼りにロジスティック回帰を動かしたことがあるだけでした。その時は「面白いという感情」よりも「手元のデータに対して、良いか悪いかもよくわからない精度を眺める虚しさ」の方が上回っておりました。この時ふと、AtCoderと同時に登録し、アカウントだけ持っていたKaggleについて思い出しました。そこで「Kaggle上でまともなデータセットをもとに周りと精度を競えば、あの時のような虚しさを感じることなく、勉強にもなるだろう」と思い、コンペに参加し始めました。結局、無事ドハマリしてしまい、OSIC Pulmonary Fibrosis Progressionというコンペで運良く準優勝できたことで更にKaggle沼に引き込まれ、2021年1月にはKaggle Masterになることができました。
 このタイミングで社会的な課題や自身の興味・関心を考えた場合に、データサイエンス分野で仕切り直したいという思いが強くなり、転職活動を始めることにしました。「どんな仕事がしたいのか」という問いに対する答えが出てこないまま社会に出てしまった自分にとっては、それが少しだけ具体的な形になったことで、まだ内定すら出てないにも関わらず若干安堵しました。

3.転職活動記

 ここからは実際の転職活動の内容について記載します。今回は完全に時系列順というわけではなく、項目ごとにまとめました。気になる項目だけでも読んでいただければと思います。

転職サイト・エージェントについて

 初めての転職ということもあり、転職エージェントサービスを利用しました。当たり外れもあるということで最終的には某大手3社を利用しましたが、日程調整や最終的な内定辞退の手続きを考えると、1社に絞った方が良かったかもしれません。ちなみに最初に登録したITエンジニア専門の転職サイトからは「紹介できる案件はない」ということで門前払いでした。別のサイトでも、プロフィールを見てなさそうなスカウトばかりが届き、すぐに解約しました。結果的に利用することとなった某大手3社のエージェントからはちゃんと求人を紹介してもらえたので良かったです。ちなみにエージェントの方は全員Kaggleについてご存知ではなかったので、初回の面談の時に説明する必要がありました。エージェントいわく「データサイエンティストになりたいという求職者が多いが、手を動かしてる人が全然いない」とのことで、転職市場においてKaggleをやってる人は存外少ないのかもしれません。

職務経歴書について

 自分の場合は職務経験1年足らずの異業種転職ということで何をどう書けば良いのか困りました。エージェントのアドバイスをもとに、一般的な志望動機に加えて、KaggleやAtCoderの取り組み、そこで得たスキル等をメインに書き、現職の仕事内容についてはあまり書きませんでした。また、Kaggleの実績については「Kaggle Master」とだけ言われてもわからないと思うので、順位やもらった賞金額等、数値で表せるものはなるべく記載しておきました。
 ちなみに第二新卒は学生時代の研究内容がかなりの確率で問われるため書いておくべきと言われ、そちらも記載しておきました。実際に多くの面接において学生時代の研究内容について問われました(わざわざ職務経歴書に書いてあるからかもしれませんが)。

求人について

 未経験転職を志すものなら「必須要件:○○年以上の実務経験」という項目を前に絶望するでしょう。私も「応募できる求人なんてほとんどないじゃないか」と思いましたが、転職エージェントいわく満たしてなくても通ることはそれなりにあるそうです。実際KaggleやAtCoderの取り組み・実績を考慮してくれたのか、書類を通してくれた企業がいくつもありました。このあたりについて、「メダル獲得経験があれば十分」とか「Masterじゃないとダメ」みたいな基準の有無については当然わかりませんが、そこまで明確なものがあるわけではないかと思います。当然落ちる時は落ちますし、むしろそれは当たり前ですが、コンペの実績で話だけでも聞いてくれるのは本当にありがたい話なので、そうした企業に出会うためにも多くの求人に応募することが大事かと思います。

応募した企業について

 メーカーからコンサル、Web系まで幅広く応募し、それぞれの業界で面接に進むことができました。また企業の規模もベンチャー寄りから大手まで様々でしたが、通過率に関しては業界の種類や企業規模によって大きく異なるといったことはなかったかと思います。

Kaggleはどう役に立ったか

 恐らくコンペの実績等で未経験転職を考える人にとっては一番気になるところかと思います。結論から言うと、特に書類選考の段階で大きく役に立ったという印象です。基本的に「実際の業務はKaggleで取り組むようなタスクばかりではなく、それはあくまで一部である」という考え方は多くの会社で共通であり、求職者もそれを踏まえた上で応募しているかと思います。しかしながら、世の中には「Kaggle等の実績によるポテンシャルを考慮し、それ以外で必要となる知識はこれから身に着けてくれれば良い」といったスタンスでチャンスをくれる素晴らしい企業が一定数あります。そうした企業に話を聞いてもらう(書類通過する)上で、Kaggleの実績はなくてはならなかったものでしょう。その後の面接においても、Kaggleを題材とした質疑応答があったり、Kaggleで学んだ知識が多くの受け答えに役立ったりしました。

AtCoderはどう役に立ったか

 ここまでKaggleの話ばかりでしたが、AtCoderも転職活動においては役に立ちました。こちらは実績云々よりも、企業と出会うキッカケになったという点で大変役に立ちました。いわゆる競プロerと呼ばれる人たちに着目し、AtCoderのスポンサーをしたり、コンテストを開いていたり、AtCoderJobs1というサービスに求人を掲載している企業が一定数存在します。こうした企業はプログラミングを伴うコンテストに対して大変理解のあることが多く、私もいくつか選考を受けましたが、カルチャーフィットという観点から非常にマッチしていると感じました。このような企業の方々の時間をお借りして、選考の過程でお話ができたことは、結果的に入社するしないは別としても大変有意義なものとなりました。AtCoderが無ければこうした機会は得られなかったと思います。

もちろんコンペの実績だけではダメ

 コンペの実績等が役に立つ話ばかりしましたが、当然企業が求めているのはそれだけではないという話もします。未経験転職組としてはどうしてもコンペの実績を評価してもらえるかが不安になってしまいますが、当然それ以外の部分もかなり見られます。特に「企業とのマッチング」については、面接官サイドもかなり気にかけてくれているなと感じることが多かったです。面接官の方から「うちの会社(ポジション)は○○といった働き方や方針になる。この点についてはどうお考えか?」といった形の質問を投げかけ、双方の認識をすり合わせるような形で面接が進んでいくことが大半でした。これは単に企業側の都合だけではなく、求職者のキャリアのことも考えてのことではないかと感じることが多かったです。ごく当たり前のことではありますが、自分の考えをしっかりと整理し、言語化できるよう準備しておくことが大切だと感じました。

実際の面接でよく聞かれることなど

 ここではよく聞かれた質問等を紹介します。

  • どんなキャリアを歩みたいか?
  • Kaggleでどんな種類のデータを扱ってきた?
  • Kaggleで難しいと思うところは?
  • チーム開発の経験は?
  • Kaggleはチームを組んで取り組んだの?
  • 一般的な会社説明

特にチーム開発の経験はよく聞かれます。また、Kaggleにチームで取り組んだことがあるかどうかもかなり聞かれました。Kaggler視点では同じ順位を取るならソロの方が価値のあるように思えるかもしれませんが、未経験採用という観点ではKaggle上でも良いからチームで取り組んだ経験があった方が安心なのかもしれません。また、新卒の就職活動と異なり、転職活動は事前の会社説明会等がなかったりするので、一次面接の際に15分ほどで説明してくれることが多いです。

最終的な結果

 冒頭でも述べたとおり、最終的には4社から内定をいただくことができました。内定をいただいた後はオファー面談といった形で具体的な待遇等の説明をしてくださったり、会社についてカジュアルに教えてくれる場を設けてくださったりしました。各質問に正直に答えて内定にたどり着いた企業というのは、どれも魅力的ではありましたが、一週間程の内定承諾期間を経て、1社を選びました。

4.まとめ

 というわけでKaggle・AtCoderを通じた未経験転職エントリでした。AtCoder勢からすれば、あまり関係のない内容の方が多かったかもしれません。しかしながら、プログラミングコンテスト等を通じて一部のスキルがある程度客観的な形で可視化され、それを評価してくれる企業が少なからずあるという点については、KaggleもAtCoderも関係なく共通かと思います。転職目的でコンテストに取り組むことをよく思わない人もいるかもしれませんが、これらのコンテンツにより救われた身として、転職活動の一環を書き残しておきたいと思い記事を執筆いたしました。また、コンテストの運営者及びその競技者を評価してくれた企業には大変感謝しております。こうした企業の取り組みを無駄にしないよう、まずは仕事の方をちゃんと頑張りたいと思います。また、業務と競技で互いに良い影響を与えられるよう好循環を回していければと思います。だいぶ長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。